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    ニューノーマルな時代の免疫力と腸内フローラ
    その市場性を考える

【セミナーレポート】
ニューノーマルな時代の免疫力と腸内フローラ
その市場性を考える

 ウエルエイジング総研は、2020年7月3日(金)、感染症予防に配慮しながら経済活動を戻していこうとする今、免疫力を高めるメカニズムと、withコロナ時代に求められる食品について、『ニューノーマルな時代の免疫力と腸内フローラ、その市場性を考える』をテーマにZoomを用いたセミナーを開催しました。

 セミナー第一部は、免疫と腸内フローラの最先端研究で世界からも注目される福田真嗣氏(株式会社メタジェン代表取締役社長CEO/慶應義塾大学先端生命科学研究所特任教授)による特別講演で、腸内フローラの最新研究情報や、免疫力向上におけるカギといわれる短鎖脂肪酸と食物繊維の働きについて詳しくお話をいただきました。第二部では、福田先生と、世の中に数々の新たな市場を生み出してきた藤田康人氏(株式会社インテグレート代表取締役CEO)のトークセッションが行われました。

◆新型コロナウイルス感染と腸内フローラの関連性

 福田先生の特別講演ではまず、2020年5月に発表された2本の論文報告(※)の内容を交えながら、新型コロナウイルスと腸内フローラの関連性について紹介がありました。
 新型コロナウイルスは鼻腔や気道からヒトに感染することは知られていますが、実は腸内の細胞にも新型コロナウイルスの受容体があり、そのため便から新型コロナウイルスが検出されたり、下痢を発症する人もいます。新型コロナウイルスに感染して下痢を発症すると腸内フローラの多様性が低くなり、それにより免疫力が低下することで重症化につながりやすくなる可能性が示唆されています。福田先生から「高齢者は重症化リスクが高いといわれるのも、高齢者の腸内フローラは多様性が低いことが原因の一つにあるかもしれない。」との解説をいただきました。

※参考文献
Kourosh Kalantar-Zadeh, et al., ACS Nano, 14: 5179, 2020
Zuo, et al., Gastroenterology, 2020 doi: 10.1053/j.gastro.2020.05.048

◆感染症予防の最前線“粘膜バリア”で働くのがIgA抗体 

 外からやってくる病原体への感染を防御するのは、口腔内や鼻腔、眼、気管支、腸管などの粘膜で働く粘膜免疫システムです。腸管の内腔は身体の外の環境とつながっている“体外”。腸という広大な粘膜で最前線のバリアを張って、ウイルスや細菌などの病原体を体内に侵入させないように身体を守っています。その粘膜バリアを維持するのに重要な免疫因子が“IgA抗体”です。IgA抗体は全身の粘膜面の外側に向けて分泌されており、さまざまな病原体と結合して無力化し、感染をブロックします。

◆腸内細菌がつくる短鎖脂肪酸が、IgA抗体産生を増強するメカニズムが近年明らかに 

 このIgA抗体産生を増強する因子の一つが、腸内細菌が大腸でつくる“短鎖脂肪酸(Short-chain fatty acid;SCFA)”です。「短鎖脂肪酸がIgA抗体産生量を増強するメカニズムが、近年明らかになりました。短鎖脂肪酸は、抗体を産生する元の細胞(B細胞)に作用してIgA抗体産生を増強したり、ヘルパーT細胞の一種である免疫細胞(Treg細胞)を介してB細胞に作用し、IgA抗体産生を増強したりします。小腸でも大腸でも腸内細菌の一部が取り込まれてIgA抗体がつくられますが、大腸では短鎖脂肪酸がリンパ濾胞において免疫細胞に作用してIgA抗体産生を増強します。さらに、短鎖脂肪酸は腸管から吸収されて血中に移行して全身をめぐるため、小腸のパイエル板で免疫細胞に作用してIgA産生を増強したり、全身の粘膜でのIgA抗体産生を増強したりもします。つまり、腸内細菌により十分な量の短鎖脂肪酸が産生されることが、全身の粘膜でのバリア機能を高めて感染予防に繋がるのです。」

◆食物繊維の摂取が、短鎖脂肪酸を増やす

 「短鎖脂肪酸は、ビフィズス菌などの腸内細菌が“食物繊維”や“オリゴ糖”などをエサにして作り出す代表的な代謝物質です。つまり、食物繊維を摂ることで短鎖脂肪酸を増やすことができます。」
 食物繊維を摂ると、ビフィズス菌などの大腸内の腸内細菌がエサとして取り込み、短鎖脂肪酸を産生。短鎖脂肪酸は感染予防に寄与するIgA抗体を増やして、粘膜の最前線でバリア機能を向上させます。これまで便通改善の効果で知られてきた食物繊維ですが、感染予防にも非常に重要な働きをしているということです。

◆近未来のマーケットは、エビデンス・ベースド・マーケティングが必須

 健康を考える上で、腸内環境を無視できない時代になりました。withコロナ時代には食品を食べる目的にも変化が見られます。例えばヨーグルトを食べる目的として、健康維持や免疫力アップをあげる人が増えており、一般消費者も食品の摂取に健康機能を期待していることがわかります。
 「食物繊維の摂取が感染予防にも重要であるというアプローチをするために、腸内環境に関する知見をいち早くマーケットに取り入れることが必要だと思います。近未来には、腸内フローラのタイプに合わせたソリューション提案で商品の効果を最大限にするような、次世代層別化ヘルスケアマーケットになっていくのではないでしょうか。」と、マーケットにサイエンスを取り入れる必要性についても、語ってくださいました。

◆ニューノーマルな層別化した商品づくりに、臨床試験は不可欠 

 第二部のトークセッションでは、腸内環境は一人一人異なるという視点をベースに、最大限の効果を発揮するための商品づくりについて藤田氏と論じました。臨床試験を実施して、その商品がどのような腸内環境タイプの人に効果が発揮されやすいかというエビデンスを取っておくことで、効果が発揮されにくい腸内環境タイプの人の場合には、メインの商品に“何”を加えるとより高い効果が得られるかを明らかにすることができます。これからは消費者自身が、その商品が自分に合っているかどうかを評価する時代になってくると考えられるため、サイエンスの力を活用した確かな商品パッケージをつくり上げていくことが、ニューノーマルのマーケットには不可欠だと締めくくりました。

 今回のセミナーには総勢329名の皆様にご聴講いただき、感染症に打ち勝つ身体をつくるために、『“食物繊維”を摂取することにより、腸内フローラから“短鎖脂肪酸”が産生されて、“IgA”を介して感染を予防する』ということが、セミナーを通して解き明かされ、盛会に終わりました。

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